医療事務・秘書コース 2019年度
みなさんは「DPC」という言葉を聞いたことがありますか?
医療に関する用語は、聞きなれない言葉や略語が多いですよね。DPCも聞きなれない言葉だと思います。実は、このDPCという言葉は患者さんにとって、お金と自分が受ける医療サービスに関係するとても大切な言葉なんです。
さて、DPCとはなんでしょうか?
DPCとは、新しい医療費の計算方式です。
国が定めた病名と診療行為の組み合わせによって、患者さんを約5,000種類のグループに分けます。そのグループごとに金額が設定されているため、患者さんはそれに合わせて医療費のお支払いをしていただきます(図1)。
今までの医療費の計算方式を「出来高払い制度」と言います。それは、診察で行なった検査や注射、投薬などの量に応じて、すべてを合計した医療費(出来高)が計算されていました。新しい計算方式のDPCは、それらをまとめた「包括金額」が設定されています。つまり、このグループだったら「1日何円」と決まっているわけです(図2)。
DPCの導入によって、病名や診療の内容に応じてどのくらいの医療費がかかるのか目安がつき、患者さんにもわかりやすくなります。そして、医療の効率化と透明化がはかれると考えられています。
DPCを新しく導入した目的は、
医療の質 (quality):良い医療サービスを受けたい
医療費 (cost):できるなら安い方が良い
これをどのように両立させるのか。難しい問題です。実は日本だけではなく、国際的に議論されている問題です。両立させるため、各国で「似たような制度」が導入され、日本ではDPCが導入されました。
医療は専門用語や略語が多く、難しいというイメージがあると思います。できるだけ分かりやすく、講義を進めてゆきます。一緒に学びましょう。(担当:降旗光太郎)
週4日は医療ドラマが放映されており、医療現場への興味が向いている感じがしています。いずれも医師や看護師がメインのドラマが多いのですが、医療従事者には臨床検査技師、臨床放射線技師、理学療法士などの国家資格取得者、そして病院の事務職員も含まれます。医療事務職は「病院の顔」と言われ、サービス業である医療機関では、最初に患者さんが会う人となります。医療事務職は受付・会計・診療報酬請求業務を行う医事課業務が中心となります。また、病院によっては看護部に属している医師事務作業補助者、病棟クラーク、病歴室でカルテ管理を行う診療情報管理業務なども大枠では医事課業務となります。
「医療事務基礎」は、どの業務に従事するにも必要な基礎知識であり、医療保険制度等、医学概論、医学用語を含め、医師が記載する診療録(カルテ)をしっかり読解し、正しい保険請求を行うことができるよう、基本からしっかり学んでいきます。
初めの一歩は、これ、読めますか? 書けますか?から。
例えば「鶏眼」、「鼻汁」読めますか? 「とりめ」、「はなじる」と読む学生など珍回答が続出し、教室が笑いに包まれました。これは「けいがん」「びじゅう」と読み、「うおのめ」「鼻水」のことです。こんな言葉は日常会話では使いませんね? 医療事務が難しいと言われることがありますが、法令用語も多く、日常的に使われる言葉ではないため最初は難しく感じ、私が宇宙人のように思うかもしれません。診療報酬(医療費)の計算も診療ごとに決まりがあるので、1つずつ丁寧に解説していきます。ですから、3か月後には皆さんもすっかり宇宙人の仲間入りです。初学者である先輩たちも、講義を受け、課題を重ねるうちに、試験レベルまでに到達できるようになっており、自分たちでも驚いていました。
「今はコンビューターがやってくれるから、手書きの計算なんていらない」と言う方もおりますが、確かにとても便利で楽になりました。でも、計算のシステムが理解できていないと、コンピューターに入力することができません。手書きの大切さはここにあります。
また、2020年4月より診療報酬(医療費)の改正が行われ、一番新しい情報を取り入れたオリジナルレジュメを作成し、授業を展開します。更に、医療現場が使用している点数表を使用し、解説を加えていきます。
医療機関では、何かあれば患者さんは必ず窓口に尋ねてきます。その時に「わかりません」「知りません」などといった冷たい対応は医療機関の評判を落とす原因になります。笑顔で懇切丁寧に対応できるよう、患者応対を含めた講義を行っています。医事課業務は、医師等の診療行為に基づき、診療報酬の算定ルールに従って正確に請求することは、病院の収入源となり、医療機関の信用・信頼にもつながる大切な業務です。医療現場で即戦力となるため、「医療事務基礎」をしっかりと学び、更に「ICDコーディング」、「DPC概論」、「医療秘書概論」、医療経営にまで及ぶ「医療マネジメント論」へとステップアップできるよう、すべての講義が関連しています。また、「医療事務基礎」から「調剤報酬請求事務」、「歯科医療事務」、「介護保険請求事務」へも展開でき、調剤薬局、ドラッグストア、歯科クリニック、介護施設などへの就職の選択の幅を拡げることができます。
医療提供施設に働く者としての意識を高く持ち、しっかり学んでいって欲しいと思います。(医療事務基礎担当 水野)
1月20日から『病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~』という医療ドラマがスタートしました。ドクターX、コードブルー、グッド・ドクターなど、これまでも病院を舞台としたドラマがたくさん放送されてきましたが、今回の医療ドラマは経営難に陥った病院をいかに再生させるかという「病院経営」に焦点をあてたドラマです。経営に関する専門用語がたくさん出てくるので、少し難しい内容かもしれませんが、小泉孝太郎初主演の面白い作品ですので興味のある方は是非視聴してみてください。
さて、医療事務・秘書コースにおいても「病院経営」の基礎を学ぶための「医療マネジメント論」という専門科目を開講しています。この授業でどのようなことを学ぶのか、授業内容について何回かに分けて紹介させていただきます。
1.経営理念やビジョンについて
経営を行う上で重要なこととして、病院の経営理念やビジョンを明確にすることがあげられます。各病院においては、何のために存在し、どのような姿を目指すのか、将来の方向性を明らかにする必要性があります。また、それらを病院組織内部に浸透させるとともに、患者や社会全体に対しても発信する必要があります。経営理念は組織の根幹となるものですので、その重要性を理解する必要があります。
上述した医療ドラマ『病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~』は長野県にある相澤病院の実話がベースになっているようです。下記では相澤病院のビジョンを紹介したいと思います。
<相澤病院のビジョン>
●ERから救急入院まで、患者病態に応じた迅速で的確な救急医療を実践して、相澤病院の救急医療を確立、発展させる
●急性期中核病院として期待される医療と相澤病院の強みとする医療を充実・強化して、中核病院としての役割を果たす
●相澤病院の職員としての使命感・倫理観を持って、職能を磨き、患者さんの視点に立って、適正で安全な医療を提供する
●職種間のコミュニケーションを良好にして、多職種協働による効果的なチーム医療を推進する
●入院早期からリハビリと退院支援を行うことにより、退院後の患者・家族のQOLを高め、退院を促進する
●課題を明確にした上で、目標を定め、PDCAサイクルにより、医療の質・病院の質・経営の質を継続的に向上させる
●適正なコストで収入を確保する筋肉質な組織を創り、国が進める医療改革に対応する
引用:相澤病院ホームページ http://www.ai-hosp.or.jp/intro/intro02.html
アクセス日 2020年1月30日
2.お金の管理について
お金の管理も重要なテーマです。自治体病院の約88%が赤字、医療法人等の私的病院でも約37%が赤字となっています。赤字が継続すると、医療機器や医療資材などの費用、医師や看護師等の人件費を捻出することができず、事業を継続することが困難となります。病院が倒産すれば、患者や地域社会に大きな影響を与えることとなります。質の高いサービスを継続的に提供するためには、支出をカバーし得る収入を継続的に確保し、健全な経済的基盤を構築することが重要となります。
では、収入を増やすためにはどのようなことが必要でしょうか?病院によっても異なりますが、一般病院の場合、医業収益に占める入院収入の割合は約7割といわれており、入院収入を安定的に確保することが求められます。つまり、病床稼働率(病床がどの程度、効率的に稼動しているかを示す指標)を高く維持することが重要であり、赤字にならないためには、一般病院では87%程度の病床稼働率が必要であるといわれています。
入院患者は、①外来経由、②救急経由、③紹介経由の3つの入院ルートで来院されます。外来経由の患者を増やすためには、外来患者を増やすことが重要となります。そのためには地域の方々に病院の存在を知ってもらい、また、患者から選ばれる病院になることが必要です。救急経由の患者を増やすためには、救急患者の受入体制を強化し、救急患者の受入れ率を高める必要があります。紹介経由の患者さんを増やすためには、地域のかかりつけ医との病診連携、他の病院との病病連携が重要となります。診療所や他の病院に自病院が得意とする分野や医療機能を知ってもらえるように、広報活動に力を入れることも重要かと思います。
一方で、黒字にするためには支出を減らす取り組みも必要です。例えば、医療機器や医療材料の調達コストの削減や光熱費・消耗品・備品に係る経費の削減などがあります。支出のうち、大きな割合を占めるのは人件費ですが、人件費の行き過ぎた削減は定着率の低下やモチベーションの低下につながるため、慎重に行う必要があります。納得性のある人事評価制度を構築し、総人件費を管理していくことも重要かと思います。
今回のブログでは、病院経営の中でも「経営理念」や「お金」に関することを取り上げましたが、医療は人の生命や身体に直接関わるサービスであるため、安全性の確保やサービスの質の向上を図ることも重要な経営課題の一つです。また、サービスの質を高めるためには、その前提として病院で働く職員の労働環境の改善やワークライフバランスの推進など、職員の満足度を高める取り組みも重要となります。次回のブログでは、医療安全や人事労務管理について説明していきたいと思います。
使用テキスト:三田寺裕治『医療福祉経営入門』みらい 2019年
https://www.mirai-inc.jp/books/detail.php?9784860154776
小松大介『病院経営の教科書』日本医事新報社 2015年
1年生は2年生に、2年生はいよいよ卒業を残すのみとなりました。2年生全員が就職内定をいただけ、成人式も終わり、後期試験もやりきりました。水野ゼミの活動目標は「コミュニケーション力を高める」を軸に、1、2年合同で様々な行事で活動してきました。最初は遠慮していた1年生も2年生のリードのおかげで、すっかり馴染んでいました。
最後に、2年生から1年生へ「内定報告会」のプレゼントがあり、先輩方からのエールをたくさんもらいました。実習、就職活動がすぐ始まる1年生にとって、有難い大きなプレゼントでした。
そして、今回ラストゼミでは、1年生全員が協力し、先輩をもてなし、卒業祝いをすると企画、進行をしてくれました。プレゼントのサプライズもあり、赤い薔薇とゼミのメッセージカード入りのミニアルバムを1年生がそれぞれお世話になった先輩に渡すと、2年生は本当に喜んでくれました。
卒業式を以って、Uターン就職をする学生もいるため、本当にバラバラになってしまいますが、2年間一緒に頑張ってきた仲間との絆は変わりません。
温かい雰囲気でラストゼミを終えることができて、ちょっと2年生ロス気味ですが、また次に入学してくる1年生、そして2年生のために、また一緒に走る準備をしていきます。素晴らしい時間を過ごせて、とても感謝しています。
1年生は2月中旬から病院実習がスタートしますが、実習が始まる前に「医療施設実習指導」という授業を履修し、実習の意義や目的、実習生として求められる基本的態度、守秘義務の重要性、実習記録の書き方などを学習します。
本日は、医療機関の実習担当の方に来校いただき、実りある実習にするためにはどうしたら良いのか、実習に向けての心構えや実習上の注意点についてご講演いただきました。
実習は自分の将来を考えるきっかけにもなりますし、積極的に取り組むことで大きく成長することもできます。成長するためには、実習に積極的に取り組み、学ぼうとする姿勢をもつことが重要であるとのお話をいただきました。
また、病院はモノを作る場所ではないので、患者さん一人ひとりに合った個別的対応が必要であること、迅速に業務を行うことも必要であるが、正確性や安全性を最優先に行うことが重要であるとのお話がありました。
接遇の面では、身だしなみや笑顔、挨拶、声の大きさやトーンに留意することが重要であり、業務においては効率性も考え常に改善しながら業務に取り組んでほしいとのことでした。
あと1か月程度で実習が開始となりますが、実習に行く目的や実習生としての注意事項を改めて確認し、健康管理にも十分気をつけて実習に臨んでもらいたいと考えています。